シナプスの笑い Vol.9
座談会のテーマは「見えない病ゆえの悩み」です。目には見えない病であるがゆえに誤解を受けることも多く、周囲とのギャップが生じやすい精神疾患の症状を、どのように伝えれば相手に理解してもらえるのか、ロールプレイを通じて探ってみます。
看護師会で統合失調症体験者二人が講演した際の原稿も掲載。患者と医療者の相互理解に一役買いました。
特集では、精神科地域医療を取り上げた映画「精神」と、その監督想田和弘氏の著書「精神病とモザイク」を取り上げます。体験者による感想と想田監督からのメッセージを掲載しました。
体験者が病を振り返る新企画「視線恐怖って何?」が始まります。対人恐怖症に悩んできた半生を当事者が見つめ直します。
A5判(148×210ミリ)
128頁
定価 (本体762円+税)
ISBN 1883-0374
2009年9月30日発行
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内 容
特集・企画
「見えない病ゆえの悩み」
精神病を患うと人それぞれいろんな症状ある。それをうかがう家族の反応はさまざま。それぞれの経験を振り返ってみて、精神病がどんな病なのかを座談会を通して浮き彫りにする。どの病気もそうだが、この病気は特に家族、医療関係者等の理解が大切である。目に見えない精神病の病状をどう伝えればよいかといった方法を探る。精神病を抱える仲間同士、楽しく話し合いながら病気を訴えるロールプレイを行い、職場等で具体的に活用できるコミニュケーションを提案。
「体験者が語る 映画 『精神』 /本 『精神病とモザイク』 」
精神病をモザイク無しで撮ったこの映画を観た精神病体験者の感想を集めた。映画に登場する菅野直彦氏と美咲氏による詩を掲載。菅野氏は自身の書きためた詩と写真を手製本として小社から発売した。
「想田和弘監督からのメッセージ」
映画 『精神』の想田和弘監督から、上記映画と本をみたラグーナのスタッフにメッセージをいただいた。映画や本の作り手がピッチャーなら、観客や読者はバッターとのこと。スタッフの感想に対し、「センター前クリーンヒット」、「ピッチャー強襲の弾丸ライナー」と楽しくたとえ、最後には「ラグーナ出版の皆さんは最高の強打者チームです」とコメントをいただいた。
「変だな…と思った時に」
鹿児島県精神保健福祉センター編と題し、Q&A方式でセンターの情報を提供。利用者への支援やメッセージを掲載。
「禁パチ」
ギャンブル依存に悩む方からの投稿記事。お金にからむ痛々しい体験を綴る。
「ノンフィクション精神科事典」
「記憶」「狂気」「恐怖」「義理」「規則」「気ばらし」「ギブアップ」「客観」「急性期」「虚構」「緊張」を解説。
「視線恐怖って何?」
イラストを添えて分かりやすく視線恐怖を解説。
連載・投稿
「終着駅」
孤独な女性が精神を病んでいく過程がリアルに描かれる。
「やどかり姫」
失職し転落したやどかり姫。病んだ精神から家出。彼女の行方を描く。
「これから」
生きる喜びをリズミカルに詠う詩。
「精神障がい者の妻と職親を兼ねて四十年」
自身も精神病の体験を持ちながら、庭師として独立、精神障がい者の職親となって真面目に働く姿を紹介。妻の病気にいたわりの気持ちを持って前向きに生きていく姿を描く。
「希望という名の星」
つらい過去を持つ元教師の心の再生を描いた作品。
「言葉の力」
たった一言のなぐさめが幸福の種となって心に届くことを描いた作品。
投稿作品解説
作品名:ショット 「天」「炎」「町」「人間」「光」「天使」「悪魔」
今回初収録となったショット。ショートショートよりも短い物語を追及したのが「ショット」です。箴言でもなく格言でもなく、詩でもなくオリジナルの領域を開拓しようという、開拓移民のみつけた黄金の鉱脈だと思っています。書くとなると、短い空間に起承転結のほかに「あっ」と思うことをいれれば、ショットになります。
作品名:漫画 「やどかり姫
やどかり姫は、自身が病気になったいきさつから、回復の喜びを漫画で広く人に伝えたいメッセージをこめて描きました。姫というと、良い意味ではかわいらしい夢見るイメージですが、世間知らずとか甘えているイメージもあります。自分が病んでいた時、どんな気持ちでどんな行動にでたか客観的に思い出してみると、そんな姫というイメージがぴったりだと感じました。また、やどかりはラグーナに住む生き物であり、良い住みかを求めてさすらう生き物。転職を繰り返し、安住の地を求める自分をやどかりに重ねました。
精神病院での入院生活。体験した者でないと分からない世界です。どんな状況でも小さな喜びを見つけて生きていくことが奇跡を呼びます。これまで小さな殻に閉じこもり悶々としていましたが、新しい住みかを見つけました。そこには楽しい仲間がいます。病気などで孤独な気持ちに陥っている人に読んでもらい勇気づけられたらいいなと思います。
作品名:「視線恐怖って何?
私の病で苦しめられた原因の大部分が「視線恐怖」でした。薬で軽くなったものの、疲れた時に発症することが多いでした。
「シナプスの笑い」の制作担当をしていて、ふと自分の経験したことを分析して世に出してみてはどうかと思いました。
製作中は当時苦しかったことを思い出し、苦労しました。しかし毎回完成するたびに「脱皮」していく感覚があり自己分析が進みました。当時、苦しさがあるにも関わらず、ずっと諦めなかった自分に驚きました。社会の中で暮らしていきたいという強い気持ちのあらわれだったと思います。
3回に渡る掲載が終了し、現在は「視線恐怖」が出るときもありますが、ほぼ落ち着いて生活しています。早期に適切な治療をおこなえば、支障なく社会へ出れることを実証し、同じ症状のある読者に少しでも安心を与えることができたかなと思っています。
目 次
第Ⅰ部 特集
座談会:みえない病ゆえの悩み-伝え方-
詩集『心』 笑顔/一人ぼっち/野の花/ダイヤモンド/ごめん/気持/応援歌(菅野直彦)
詩:生きる(美咲)
体験発表 「看護師会」講演-幻聴と共に生きて-(竜人)(島原保)
体験者が語る映画『精神』/本『精神病とモザイク』
想田和弘監督からのメッセージ
詩:人生のどん底をすくうのは心の正直さです(松井浩二)
第Ⅱ部 連載
小説:-彼を探す旅が始まる-「終着駅」(日向葵)
小説:-イマココまで千年の旅が始まる-「れんげを摘む日」(中原初音)
詩:(石橋勝)
ショット:(竜人)
漫画:「やどかり姫」(星礼菜)
第Ⅲ部 企画
体験者が行く! 変だな…と思った時に 鹿児島県精神保健福祉センター編
禁パチへの文集(まっちゃん)(大ちゃん)
JDのつぶやき 風を切った瞬間(JD)
ノンフィクション精神科事典[体験者版](竜人編) き
視線恐怖って何?(四朗)
第Ⅳ部 投稿
家族体験記 精神障がいの妻と職親を兼ねて四十年 後編(M・N)
小説:「希望という名の星」(稲岡里美)/-単調な日々の繰り返し-「言葉の力」(パスタマン)/恋愛観による人生論-そして-(中間隆洋)
エッセイ: 僕の統合失調症という問題に対する解(田中毅)/
小説:「I think I can」(R・E)
物語:しゃべる鏡(松はな子)
エッセイ:熟成(パンプリン)
短歌:(東瀬戸サダエ)(作道修)
俳句:(池ノ上弘)(藤島范)
句会紹介 「デイケアすまいる」うたの会
詩:花(パスタマン)/やさしさ(ウナム)/離れ(HiDe)/竹のように(栗ちゃん)/家族の音(のんちゃん)/きれいな言葉でなくとも(ゆめびと)/蒼い空(卓斗)/雨のメイプルガーデン(雪時)