中井久夫と考える患者シリーズ4 統合失調症と暮らす

中井久夫と考える患者シリーズ4 統合失調症と暮らす

¥2,750

中井久夫と考える患者が読み解く、
病を得て"世に棲む""働く""暮らす"意味を見つめ、
信頼と希望の灯をともすシリーズ最終巻!

中井久夫のテキストを"考える患者たち"が読み解くシリーズ最終4巻。第1巻で病気の経過をたどり、第2巻で症状を読みほどき、第3巻で治療・治癒を探った深淵な考察のまなざしが、社会に身を置いて生きる意味へと向けられる。

患者の"社会復帰"のあり方として最も重要なことは、一般的な社会通念に縛られることなく、自由な探索行動に基づくひそやかな居場所を見つけ、「世に棲む」ことであると中井は考える。巧みな少数者としての生き方を選択することで患者は安定して社会にその座を占めることができるのであり、豊富な臨床経験を通して得た知見から描かれるその植物的様相は説得力に富む。画一的ではなく、さまざまな方向へらせんのようにひっそりと根を伸ばすような生き方があることを教えてくれる。
「働く」ことは患者にとっても周囲にとっても重い課題となりうるが、患者の治ろうとする意志と治療を受ける権利の尊重を最優先に置くことを訴える。周囲の圧力と自らの焦りから、休息も取らずに全力を出して病状を悪化させる患者も多いなか、「治療という大仕事」を既におこなっていることを尊重し、消費活動も含めたコミュニケーション活動の一環として生産活動を捉える懐の深さが肝要であると説く。心身の余裕と生活の基盤づくりがあって初めて患者は「世に棲む」人となり、安定した生産活動がおこなえるようになる。

以上のような中井の思索を踏まえ、考える患者たち自らがその体験を語り、中井の設定した問いに考察を加えてゆく。その過程を通して、患者の抱える苦悩と、信頼と希望へ導く中井の治療思想体系が浮き彫りにされる。 歴史や文化の幅広い知識を背景に広く社会全体に目配りしたうえで、患者の持つ「心のうぶげ」を大事にし、拙速を戒め、ゆるやかな自然回復へと促す「養生」を要諦とした中井の治療思想は、変革期を迎えつつある現代の社会を導く道標ともなる。

重要論文「世に棲む患者」「働く患者」に加え、中井の思索と臨床の原点となった44の問い「統合失調症における主要な問題点」、養生という治療思想について語った講演録「精神科の病と養生」など本書初掲載を収録。

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四六判(128×188ミリ)
256頁
定価 (本体2500円+税)
ISBN 978-4-904380-55-0 C3047
2018年12月25日発行

著者・監修者

中井 久夫

1934年奈良県年生まれ。
京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授。精神科医。
精神医療の臨床、研究に携わるばかりでなく、文学、詩、絵本の翻訳、エッセイなどの文筆家としても知られる。1985年芸術療法学会賞、1989年読売文学賞(翻訳研究賞)、1991年ギリシャ国文学翻訳賞、1996年毎日出版文化賞を受賞。また阪神淡路大震災時のメンタルヘルスケアの功績などにより、2013年文化功労者に選ばれた。
著書に、『分裂病と人類』(東京大学出版会、1982,2013)、『精神科治療の覚書』(日本評論社、1982,2014)、『治療文化論』(岩波書店、1990)、『看護のための精神医学』(山口直彦共著、医学書院、2001)、『いじめのある世界に生きる君たちへ』(中央公論新社、2016)ほか、『中井久夫著作集―精神医学の経験』全6巻別巻2(岩崎学術出版社、1984—91)、『中井久夫集』全11巻(みすず書房、2017~刊行中)、『中井久夫と考える患者シリーズ』全4巻(ラグーナ出版、2015~2018)など多数。

考える患者たち

統合失調症のある6名の患者。東瀬戸サダエ、有川、ウナム、エピンビ、緒田士郎、星礼菜。

はじめに/森越まや(本文より)

本書は、統合失調症を深く探求した精神科医・中井久夫先生(以下中井)の著作を、統合失調症を体験した患者たちが医療者とともに読み、病の体験から考え、対話した「中井久夫と考える患者シリーズ」(全四巻)の最終巻である。中井の精神医学のテキストは、「病的なものをこうむっている心身のほうに注目すること」に貫かれ、病を抜けて生きる励ましに満ちている。だからこそ私たちは皆で集い、希望を紡いできた。
第一巻『統合失調症をたどる』では経過を、第二巻『統合失調症をほどく』では症状を、第三巻『統合失調症は癒える』では治療と治療関係を考察した。この最終巻では、患者たちが自分自身を見失うことなく社会の中で棲み分け、働き、暮らすことを考える。一人の人間として当たり前に、ごく普通に、この社会の中に暮らす姿である。
中井は、統合失調症は治りにくい病気ではないと言う。自尊心を取り戻し、自然回復力を引き出す治療が重要であり、心の生毛(うぶげ)をすり減らさずに病抜けして生活のひげ根を育て、世を棲み分ける生き方を描く。考える患者の一人、緒田士郎は、この本で「患者だって生きている。病気があっても生きているんだ、ということを伝えたい」と語った。私たちは自分がどう生きるか、その人がどう生きることができるか、を考えてきた。精神医療や精神保健制度、偏見の問題は根深いが、統合失調症を一人の人間、一つの人生の中で考えたいと思う。
(略)

統合失調症における主要な問題点(本文より)

中井の問い
三四 統合失調症の治療薬の盲点となっている統合失調症の部分はどういうところか。

考える患者たちの答え
【有川】幻聴が消せないこと。効いたり効かなかったり、効き過ぎたりすること。症状を治療しても、心を治療できないこと。
【ウナム】生活習慣を治せないこと。私は薬の関係で付き合いのアルコールが飲めない。生活習慣を治療薬に合わせないといけないと思っている。
【エピンビ】治療薬を飲むことによって、頭の働きが抑えられる。そのことがほんとうにいいことなのか、医者の世界観、価値観の押しつけなのではないか、そこがはっきりしない。しかし、最低限の治療薬であれば、それほど頭の働きが抑えられるという感覚はないので、患者を信頼して様子を見てほしい。医者はもっと妥協してもよいのではないか。
【緒田】薬は興奮しやすい精神状態をある程度和らげてくれる。しかし、統合失調症の治療にはその人自身の人格形成も含んだ根本的な人間革命が要求されるので、薬で治すことはできないと思っている。
【星礼菜】深い自己不信を治してくれたのは薬ではなく、人に信じてもらえたことだった。その信頼が、自分に価値があるということを証明するための行動を起こす勇気を与えてくれた。

目 次

はじめに/森越まや

第一章 世に棲む患者、働く患者/中井久夫/中井久夫
一 世に棲む患者
二 働く患者―リハビリテーション問題の周辺

第二章 統合失調症の経験/考える患者
統合失調症は私の財産/東瀬戸サダエ

第三章 「世に棲む患者、働く患者」再考/中井久夫・考える患者
「世に棲む患者」再考 各論
「世に棲む患者」再考 総論/エピンビ
「働く患者」再考 各論
「働く患者」再考 総論/エピンビ

第四章 統合失調症における主要な問題点/中井久夫・考える患者
統合失調症における主要な問題点/中井久夫
中井の問いに対する答え/考える患者

第五章 暮らす患者/中井久夫
「住むこと」から「棲むこと」へ
精神科の病と養生
書評 東瀬戸サダエ『風の歌を聴きながら』

解説 草木のある憩いの庭/胡桃澤 伸