シナプスの笑い Vol.36
巻頭特集では、当事者研究が世に広まるきっかけとなり、社会的にも注目された「べてるの家」の向谷地生良氏をゲストに迎えて開催された鹿児島での当事者研究会の模様を紹介します。次いで『精神障害とともに』が南日本新聞に連載されていたときの専従取材班の記者・三宅太郎氏へのインタビューを掲載。
座談会では、オリブ山病院の横田泉副院長や工藤メンタルクリニックの工藤潤一郎医師らと「考える患者たち」が、身体拘束、閉鎖病棟、幻聴とのつきあいかた等をテーマに語り合いました。
A5判(148×210ミリ)
128頁
定価 (本体741円+税)
ISBN 978-4-904380-79-6 C0093
2018年10月20日発行
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内 容
特集:地域へひろがる精神医療と保健福祉
当事者研究in鹿児島 べてるの家 向谷地生良氏を迎えて
「当事者研究」は、障がいのある人が自らの問題に向き合い、仲間と共に研究することで人とのつながりの回復を目指す。当事者研究の嚆矢となった北海道の浦河べてるの家創始者であり、理事を務める向谷地氏を迎えて開催された鹿児島での当事者研究会の模様を紹介。当事者との率直な意見交換がおこなわれ、向谷地氏が豊富な経験からアドバイスを提供した。
特集:『精神障害とともに』連載を終えて 南日本新聞記者 三宅太郎氏インタビュー
NPO法人鹿児島県精神保健福祉会連合会でおこなわれた講演後に独占インタビュー。取材を通して実感した鹿児島の精神障がい者を取り巻く現状を解説し、社会と報道の責任をあらためて問うとともに、共生社会へ向けた展望を語る。
座談会:精神科医と未来を語ろう ―拘束、閉鎖病棟について―
沖縄県のオリブ山病院の横田泉副院長や神奈川県の工藤メンタルクリニックの工藤潤一郎医師ら、『中井久夫と考える患者シリーズ』を読んでくださっている医療関係者の方々と「考える患者たち」が、身体拘束、閉鎖病棟、幻聴とのつきあいかたなどをテーマに精神医療と福祉を語り合う。
連載:サークル活動紹介 ひだまりカフェ
不登校や引きこもりの支援もおこない、孤立した人の居場所として、お茶を飲みながら悩み事を打ち明けられるNPO運営のオープンカフェを紹介。
新連載:イギリス精神医療の取り組み
「リシンク・メンタルイルネス Rethink Mental Illness」の実践
当事者が翻訳する新連載シリーズ。イギリスの精神保健慈善団体「リシンク・メンタルイルネス」の活動について、ホームページからその実践活動を紹介する。
連載:探求―統合失調症とはどんな病気か? 第11回
中井久夫を患者の視点から読み解く
統合失調症の陥穽
陥穽とは落とし穴のことで、統合失調症は患者や医療者を落とし穴にはめて重症化、慢性化してしまうのではないかと中井は考えた。患者の回復体験から、その落とし穴をどのように自覚し、免れたのかを考察する。
連載:小説 「松田家の人々」 第9話
終戦を経て、マリをはじめとする松田家の人々は必死に生きる。事故死した三女チズの長男芳生は県外の叔父に引き取られるが、居心地の悪さから叔父宅を出ていき、新聞販売所に住み込みながら大学に通う。しかし無理がたたって病気になってしまう。
連載:小説 「ぬいぐるみふぁーざー」 第11話
目が覚めたらぬいぐるみになっていた男、北川雅俊。不倫を疑われながらも娘のいじめ問題に真正面から立ち向かい、娘と和解した雅俊は、家族関係を立て直すべく、いよいよ入院している妻のもとへと赴く。
福祉事業所紹介:就労継続支援A型事業所 ワークスペースコケット
連載:漢字の語源から精神文化を探る 「和」について
投稿作品解説
投稿 体験記:「近況報告」
就労継続支援B型作業所に通いながら、日々を自分なりのリズムで楽しく過ごせている現状に感謝しつつ、主体的に行動することで成長する実感を伝える。平穏な日常と時々のチャレンジが幸せを運んでくれることにあらためて気付かせてくれる。
投稿 エッセイ:「防災士の講習を受けて」
精神障がいを持つ自分が被災したときに避難所での生活が難しいであろうことを想定して、自ら防災士の資格を取得した際の思いを述べる。災害時に障がい者が自分の症状に応じてどのように行動するのが良いのか、あらかじめ考えておくことの重要性を認識させられる。
目 次
特集
当事者研究in鹿児島 べてるの家 向谷地生良氏を迎えて
特集
『精神障害とともに』連載を終えて
座談会
精神科医と未来を語ろう ―拘束、閉鎖病棟について―
連載
サークル活動紹介 ひだまりカフェ
新連載
リシンク・メンタルイルネス Rethink Mental Illnessの実践 第一回
リシンク・メンタルイルネスについて
連載
探究 ― 統合失調症とはどんな病気か? 第十一回
中井久夫を患者の視点から読み解く
統合失調症の陥穽
連載
第五回 ショットの世界
連載小説
松田家の人々 第九話 / ぬいぐるみふぁーざー 第十一話
投稿作品
<入院患者より>
空くんとのんのん/わかれがきたね/秋/無題/イラスト
<地域に暮らす患者より>
テルテルボウヤ/象の夢/とある動物園にて―黒ウサギ、カイの物語―
ティムソンとシーナ/近況報告/整理整頓の得手不得手の極意とは
あきらめない/防災士の講習を受けて/幸せを願いつつ/一日遠足に参加して
孤軍奮闘記No.1/チョコットコーヒーブレイク/ 他詩・イラスト掲載
連載
福祉事業所紹介
就労継続支援A型事業所 ワークスペースコケット
連載
漢字の語源から精神文化を探る
「和」について
エッセイ:心のレポート -編集部便り-
相談室:お笑いお悩み相談室 -就職がうまくいかない四十代の精神疾患のある男性から、
『もうこの先いいことはない』と言われました。何と答えたらいいですか?
当事者映画評:『ドリーム』
当事者書評:『オープンダイアローグとは何か』