まよなかのシャボンだま
詩人で児童文学者の佐野美津男に師事し、発達の遅れや偏りがあるとされる「障害児」と長年向き合ってきた著者が、こどもとのコミュニケーションから生まれた心象を詩でつづる。著者の内なる少年の心が、現代のこどもたちの大切な部分にやさしく語りかける。
これから大人の階段をのぼるこどもたちの心の礎に、また、学校教育関係者にもおすすめの1冊。
文庫判(107×150ミリ)
196頁
定価 (本体648円+税)
ISBN 978-4-904380-22-2 C0192
2013年5月9日発行
著 者
さきはら ひでき
1961年、神奈川県小田原市生まれ。言語聴覚士・保育士・臨床発達心理士。
法政大学教育学科在学中に詩人で児童文学者の佐野美津男に師事。東京学芸大学大学院修士課程修了後、福祉・教育機関で言語や発達にかかわる仕事に従事。2000年4月から鹿児島国際大学教員。
専攻:発達心理学・知的障害児者の授業方法・吃音とセルフヘルプ・社会福祉援助技術論・「雑談」の方法など。著作に『みないでかいてるから』(ラグーナ出版、2016年)がある。
はじめに(本文より)
(略)
詩人で児童文学者の佐野美津男とのやりとり、手紙のなかの言葉を思い出した。
「自分とその周辺をきちんと書いておけ。お前、書く前にベラベラしゃべり過ぎ。もっと自分と向きあって書け」
「もう返信用の切手と封筒はいらないから、その代わり書きたいことを好き勝手書くから、それでもいいならやりとりするよ」
「その調子で書いていきなさい。でも、それはいくつかの点に過ぎないから、それらをつないで線にすれば、背景にある立体の動きまで見えてくる」
2008年頃から創作を始めた。1行12文字で行替えという携帯電話のメール機能を使って「かなもじ」だけで人の「共に生きるかたち」を描いてきた。ここまで書くなかで、物語詩の連作によるファンタジーなんだと実感できるようになった。朝起きてから夜寝るまで、そして眠ってからの夢も含めて何をしてきたか、その先に何をどのようにできるのかを描いてきた。状況や関係の中で自分をどのように表現するかを、自問自答する場と時間を作れることの大切さを痛感させられた。自分の余裕も覚束ない中でそのような機会を作ってくれた方をどうしようもなく傷つけてしまった。
それでも、身体は後に向き、そこから見える風景を丁寧に描きながら、そこから吹いてくる風に乗って、後向きに前進する自分を実感できるようになった。自分の弱さや過去と向き合い、そこから可能なことをするのも前向きな作業と思えるようになった。路に迷うと自分の弱さや過去と向き合うなかで見えてきたことを手がかりにして、身体を一つ一つ前に運んでいけるようになった。
(略)
目 次
はじめに
ぐるぐるまきのうた
1. こしかたをふりかえることば
2. ことばがうまれるとき
3. ことばとほうほう
4. くもとえがく
5. かぜとりずむ
6. さんぽときゅうけい
まよなかのシャボンだま
1. ウォーミングアップ
2. さいきんのリハビリから
3. しぜんとからだにつたわる
ほおづえつきながらくらげ
1. とおくのみらいのむかしで
2. せかいのなかからだうまれ
3. あちこちぶつけたあとでも
4. なあんにもなかったよう
また れんらくします
1. きえてなくなるまで
2. いきていればうまれてくる
3. つたえられるかたち
4. いろんなことわすれてきた
おわりに