シナプスの笑い Vol.31
精神科病院から生まれたシナプスの笑いは、皆さまのご理解とご支援のもと、創刊から31号を迎えました。
今回から始まる新企画「地域にひろがる精神医療と保健福祉」では、新聞記者が取材した精神科医療の現状報告と統合失調症を発症した当事者の体験記を掲載。
精神障がい者の就労に目を向けた特集では、ハローワークや就労支援事業所を取材してお話をうかがいました。
座談会では、ストレス社会の現代で増え続ける「うつ」症状の当事者が、お互いの体験と対処法などを語り合います。
中井久夫の言葉を患者が読み解く連載は、精神健康のいしずえとなる睡眠がテーマです。
そのほか、新連載「漢字の語源から精神文化を語る」では、福祉の「祉」について解説。
A5判(148×210ミリ)
128頁
定価 (本体741円+税)
ISBN 978-4-904380-59-8 C0093
2017年2月20日発行
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無 料!
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内 容
連載:地域にひろがる精神医療と保健福祉
現在、日本の精神科医療は入院医療から地域生活へとシフトする途上にある。
新連載第一回目の今回は、「精神障害とともに」というシリーズ企画で精神科医療の現場を密着取材している南日本新聞の記者に「外から見た精神科医療」を語ってもらうとともに、統合失調症の当事者として入院生活を経て現在は病と向き合いながら「半自立」の生活を送る方の手記を掲載、ふたつの視点から精神科医療と保健福祉をめぐる現状と課題を浮き彫りにする。
特集:精神障がい者が働く現場レポート
障がい者雇用が拡大する近年、精神障がい者が働く現場を当事者がレポート。
ハローワーク、就労支援事業所、一般就労現場など五か所の取材を通して現状を具体的に紹介する。
座談会:うつが教えてくれたこと
現代のストレス社会において、「うつ」症状の精神疾患を抱える人の数は増加の一途をたどっている。
うつの苦悩にさらされた患者たちが、発症のきっかけとなった過去の職場での体験や、内に秘める自責感、現在の対処法など、日頃周囲には話すことの少ない心の奥を語り合う。
探究:統合失調症とはどんな病気か ― 中井久夫を患者の視点から読み解く 第六回
患者と医療者が中井久夫先生の著作をともに読み、患者の視点から考える。
今回のテーマは、精神健康の基礎ともいえる睡眠について。睡眠障害の重さをはかる目安となる目覚め心地、睡眠薬との上手なつき合い方、眠れないときの対処法について患者が体験を述べる。
平成28年9月の中井久夫先生ラグーナ来訪記も同時収録。
連載:『マインド・マターズ Mind Matters』の紹介
当事者が翻訳するシリーズ第18回。マインド・マターズとは、2000年前後からオーストラリアで国家的プロジェクトとして実施されている包括的な「学校精神保健プログラム」のことで、多くの中学・高校で取り入れられている。
今回は、スクール・マターズ第6課「メンタルヘルス教育の促進、実践のために」と、第7課「メンタルヘルス問題に対する学校の対応」を特集。
連載:小説「松田家の人々」 第4話
親の策略で嫁に出された後、実家に出戻ったマリは精神的におかしくなり奇行が目立つようになる。時は終戦直後、混乱した生活の中で、三女のチズ親子、五女サチノ、復員した二男の次男らと暮らすマリ。一人自由奔放なマリの傍らで、家族は大きく変化していく。
連載:小説 「ぬいぐるみふぁーざー」 第6話
目が覚めたらぬいぐるみになっていた男、北川雅俊。その愛らしい姿で皆に慕われ、営業成績も上々。そんな彼が、友人でホステスの美香子との不倫関係を疑われる。義妹の香苗、娘の恵梨にも誤解され、絶対絶命のピンチを迎える。
連載:漢字の語源から精神文化を探る
「白川文字学」を継承する第一人者・山本史也氏が、漢字に刻み込まれた精神世界を解き明かす。福祉の「祉」が本来意味するものとは?
投稿作品解説
投稿 エッセイ:「ねばりで手に入れた山アケビ」
外泊中、山の中にある実家近くで山あけびをとる話。添えられたくり拾いのイラストでは、山の恵みによろこぶ様子がノスタルジックに描かれている
投稿 小説:「ハムぷーの日記 後編」
ハムスターのハムぷーは特別支援学級の生徒たちと触れ合いを持つ。ハムスターの目線から、子供たちの姿や社会の現実を映し出すファンタジー。
投稿 小説:「サヤカさん 前編」
架空の現実のなかで存在するサヤカさん。喫茶店で官製ハガキに絵を描いて過ごすサヤカさんと「ぼく」との不思議なやり取りをある種哲学的な言葉で綴る。
投稿 エッセイ:「涙が止まったら」
祖母の通夜でうまく立ち振る舞えずとまどう著者。祖母との生前の思い出がよみがえり、泣きながらもお葬式で自分のできることはなにか模索する。
投稿 エッセイ:「箕面スパーガーデンの明石焼き」
学校時代の辛い経験から精神疾患を発症し、症状に苦しみながらも自立するために無理を押して働こうとした若き日を振り返る。 息子を温かく見守る母の詩も同時掲載。
投稿 短歌:「ホームシックに泣いた入院」
統合失調症を発症し二十五年になる著者が、二回の入院をへて思うこと、悲しみや希望を短歌で表現する。
目 次
連載
地域にひろがる精神医療と保健福祉
外から見た精神科医療
体験記 ― 入院から地域へ ―
特集
精神障がい者が働く現場レポート
ハローワークかごしま/就労支援センター ステップ/ワークサポートひとつ/
ひふみよベース紫原/生活協同組合コープかごしま
座談会
うつが教えてくれたこと
連載
探究 ― 統合失調症とはどんな病気か? 第六回
中井久夫を患者の視点から読み解く
睡眠について
連載
マインド・マターズ Mind Mattersの紹介 第十八回
学校の問題(SCHOOL MATTRS)について
連載小説
松田家の人々 第四話 / ぬいぐるみふぁーざー 第六話
投稿
<入院患者より>
空くんとのんのん/外泊/ねばりで手に入れた山アケビ/イラスト/
前向きにこれから/かんごふさんたちありがとう/さわやかな秋風/俳句
<地域に暮らす患者より>
ハムぷーの日記 後編/サヤカさん 前編/還暦を越えてすること/涙が止まったら/
黒ひつじの役目を果たしたい!/箕面スパーガーデンの明石焼き/息子/ファムゲーム/
ホームシックに泣いた入院/月曜日の太陽/ポジティブ言葉/君と僕/
「死にたい夜に読んで下さい」/努力/心のカゴ/深海の底/イラスト
連載
漢字の語源から精神文化を探る
福祉の「祉」が意味するもの
エッセイ:心のレポート -編集部便り-
相談室:お笑いお悩み相談室 -部屋が散らかって悩んでいます
当事者映画評:『ブリジット・ジョーンズの日記』
当事者書評:『セラピスト』